いわさきゆか(岩崎由夏)とは?YOUTRUSTを生んだ起業家の全貌
「いわさきゆか」という名前を検索すると、複数の顔を持つ人物たちがヒットする。フルート奏者、研究者、女優、アスリート。日本に「岩崎ゆか」と読める名前は珍しくない。しかしビジネスの世界で今最も注目されるいわさきゆかといえば、株式会社YOUTRUSTの代表取締役CEO、岩崎由夏(いわさきゆか)その人だ。
スタートアップ業界では知らない人がいないほどの存在感。それでいて、派手な自己演出とは無縁のスタイルで知られる。「信頼される人が報われる転職市場をつくりたい」。この一言が、彼女の原点であり、今も変わらない羅針盤だ。
岩崎由夏(いわさきゆか)とは何者か
大阪大学理学部を卒業後、2012年に株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)へ新卒入社した岩崎由夏は、新卒・中途の採用を担当。2016年には子会社ペロリへ出向して経営企画を担い、2017年に株式会社YOUTRUSTを設立した。
理系出身でありながら人材・採用の現場に飛び込み、そこで感じた「違和感」がすべての出発点だった。履歴書に書けることなんて、その人の本質の一割にも満たない。そう直感した彼女が立ち上げたのが、信頼でつながるキャリアSNSというコンセプトだった。
「レジュメに書いてあることは、実はその人の10%も表現できていないのではないか」という問いが岩崎の原体験だ。残りの90%をYOUTRUSTで表現できるのではないか、という発想がサービスの核心にある。
YOUTRUSTとは何か - キャリアSNSという新しい概念
YOUTRUSTは2018年4月にローンチして以降、スタートアップ界隈を中心にユーザー数を着実に伸ばし、2020年1月にはユーザー数が8,000人を超え、リクルーターアカウントを利用する企業も180社を突破した。
その後もサービスは拡大を続け、2022年4月時点では20代・30代を中心に利用者数が10万人を突破している。 単なる副業マッチングツールではない。YOUTRUSTが目指すのは「日常に溶け込むキャリアSNS」、つまり転職を考えていない時でも自然と使いたくなるプラットフォームだ。
岩崎氏は副業からの転職がスタンダードになる未来を予感し、YOUTRUSTを副業先も探せるプラットフォームへと方向転換した。転職市場を変えるにあたって、まずは副業領域で勝負を仕掛けたのだ。
ここには明確な戦略がある。転職という重い意思決定の前に、副業という軽い接点で企業と個人をつなぐ。そのルートを通ることで、互いを深く理解した上でのマッチングが実現する。単なる求人票と応募書類の送り合いとは、根本的に異なるアプローチだ。
南場智子も惚れ込んだ - DeNA出身者の逆転劇
岩崎はDeNAに新卒で入社後、YOUTRUSTを起業した「卒業生」だ。DeNA創業者の南場智子氏が惚れ込むほどのサービスという評判も広まっている。
これは単なる美談ではない。DeNAという巨大IT企業で採用の内側を見続けた人間が、その構造的な問題に気づき、それを解決するために自ら会社を立ち上げた。しかも元勤め先のトップから資金調達を受けるほどの信頼を勝ち取った。これはそう簡単に起きることではない。
岩崎は自身がDeNAで採用担当として働いたときに、経歴だけでは語れない優秀な人材を多く間近で見てきた。「経歴だけで人を測ることなんてできない」という実感が、YOUTRUSTというサービスの根幹をなしている。
コロナ禍という試練 - それでも前へ進んだ理由
2020年3月上旬、新型コロナウイルス感染症の蔓延による景気悪化の報道を前に、岩崎由夏はその直感で「あ、この会社終わりだな」と感じた。2020年1月に二度目の資金調達を終えたばかりのタイミングだった。
人材業界は不景気のあおりを最初に受ける業界のひとつだ。採用が止まれば、採用支援のサービスも止まる。これは誰が見ても分かる話だった。にもかかわらず、YOUTRUSTはその後も生き残り、成長を続けた。
逆境で鍛えられた経営者の粘りとは何か。答えはシンプルだった。数字が悪化しても、ミッションへの確信は揺らがなかった。「信頼でつながるキャリア」というコンセプトは、むしろ不確実な時代にこそ価値を持つと信じていた。
チームのつくり方 - ヒエラルキーを嫌う組織哲学
岩崎さんが運営するオフィスには「信頼される人が報われる転職市場に」「人材領域で一番強くて優しいチーム」「GIVE 人に惜しみなく与える」などと書かれたビジョン・ミッション・バリューが張られている。
組織のつくり方にも、岩崎の哲学が色濃く出ている。「ミッション等はチームで話し合って決めます。まとめるのもみんなで。ヒエラルキー(階層)のある組織にしたくなくて」というのが岩崎の考えだ。
社員に「一人ひとりが経営者目線で動く」ことを求めながら、トップが独断で方向性を決めない。この両立は言うのは簡単だが、実践するのは難しい。それでもYOUTRUSTが一定のカルチャーを保ちながら成長できた背景には、こうした地道な組織設計がある。
ジェンダーと起業 - 日本の壁を前にして
岩崎はジェンダーに強い関心を持つ起業家でもある。自身が女性で起業家という立場は日本ではまだ珍しく、「本当の意味での男女の機会均等は全然まだ」という現実認識のもと、YOUTRUSTとしても貢献できる部分があると語っている。
日本のスタートアップ界で女性CEOの数は依然として少ない。その中で、岩崎由夏は目立とうとして目立っているわけではない。ただ淡々と事業を育て、成果を出し続けることで自然と注目される存在になった。
岩崎は自身が「女性起業家」というカテゴリーで認識されることが多いと理解しながらも、「自分たちがどういうカテゴリーと認識されるかを理解しておくことはとても重要」と語っている。 ラベルを嫌がるのでも、ラベルに乗っかるのでもない。ただ、現実をきちんと把握した上で動く。その冷静さが彼女の強みだ。
いわさきゆかという名前の多様性 - 音楽、研究、スポーツの世界にも
もちろん「いわさきゆか」という名前は岩崎由夏一人のものではない。検索すれば、複数の分野で活躍する同名の女性たちが見つかる。
岩崎由佳(いわさきゆか)という名のフルート奏者は、洗足学園音楽大学を卒業後、スイスの音楽院でフルートを専攻し、川崎でフルート・ピッコロ音楽教室を運営する教育者でもある。
理化学研究所 生命医科学研究センターでチームディレクターを務める岩崎由香(いわさきゆか)は、慶應義塾大学で博士(学術)を取得した研究者だ。
さらに、フットサル女子日本代表としてフィールドプレーヤーを務める岩崎裕加(いわさきゆか)も存在する。JFAの公式ページでプロフィールと試合データが公開されている選手だ。
同じ「いわさきゆか」という読み方でも、音楽、科学、スポーツ、ビジネスと、それぞれの舞台で確かな足跡を残す女性たちが存在する。名前は同じでも、歩んだ道はまるで違う。これは偶然ではなく、それだけ多様な才能が「ゆか」という名前に宿っているということかもしれない。
YOUTRUSTの「信頼」哲学 - レジュメを超えた人材評価
YOUTRUSTには「紹介コメント」という機能がある。自分自身ではレジュメに表現できないことを、他者に書いてもらうことができる仕組みだ。 職務経歴書に書けるのは過去の役職やスキルだけだが、人間としての誠実さや仕事への向き合い方は、一緒に働いた人間が最もよく知っている。
これは単なる機能の話ではない。「採用とは本来こうあるべき」という信念の具現化だ。数値で測れないものを、信頼のネットワークで可視化する。この発想が、従来の求人サービスとYOUTRUSTを根本的に分ける。
岩崎が展開しようとしているのは「マネーゲームで戦わない人材サービス」だ。資金力で広告を打ちまくるのではなく、本質的な価値で勝負する。 潤沢な予算がない分、アイデアと機動力で差をつける。スタートアップとしての戦い方が、サービスのDNAそのものに埋め込まれている。
いわさきゆかが問い続けること
岩崎由夏といういわさきゆかが突きつける問いは、実はシンプルだ。「あなたは本当はどんな人間ですか」。履歴書や職務経歴書では答えられないこの問いを、テクノロジーと信頼の力で解こうとしている。
スタートアップを立ち上げた起業家の多くは、最初の数年で市場から消える。YOUTRUSTが生き残り、成長し続けているのは、サービスに「本物のニーズ」があるからだ。転職したいわけではないのにキャリアについて考えたい。自分の価値を正しく伝えたい。そういう感覚は、働くすべての人間が持っている。
いわさきゆかという名を持つ人物が、日本の各分野でそれぞれの道を切り開いているように、この名前はひとつの象徴になりつつある。型にはまらず、自分の信じるものを追いかける姿勢の象徴として。岩崎由夏が築いてきたYOUTRUSTの歩みは、まだ途中にある。そしてその道の先に何があるかは、彼女自身が一番楽しみにしているのかもしれない。